会社概要

設立の想い

PEARの松尾は、17年間程度、地球温暖化問題にシンクタンク研究者やコンサルタントとして携わってきました。そのあいだ、気候変動枠組条約、京都議定書と国際的な枠組みが整ってきて、いまや排出権市場が世界的に大きく発展し、CDMも2012年末までに30億トン程度の削減量をもたらすことはほぼ確実となってきています。これはすばらしいことで、松尾自身もさまざまな側面からそれをサポートしてきました。

ですが、上で述べたように、これによって貧しい人たちが恩恵を受けることがほとんどないことに気がつきました。これは、市場が「排出削減分」に対してのみ金銭的価値を付けるためです。企業や国の数値目標達成のためにCDMクレジット(排出権)のニーズがあるわけですから、これは致し方がないわけですね。それでは、どうすればそのような「本当に望ましい」プロジェクトが実現化するのでしょうか?

そのためには、排出削減分「以外の便益」に、市場価値が付けばいいわけです。数値目標達成「ではない」目的での排出削減量へのニーズがあればいいわけです。それが、まさに「みなさんの地球環境に対する気持ち」の市場(ボランタリーマーケットと呼ばれています)、すなわちカーボンオフセットです。

さいわい、松尾はCDMのパイオニアであり、CDM化という点で難易度の高いプロジェクトを得意とします。バイオガス・マイクロダイジェスターに代表される貧困地域のプロジェクトが実現化してこなかった理由の一つは、収益性の問題以外にCDM化が難しいという点にもありましたが、これはPEARやClimate Experts(松尾のコンサルタント会社)の専門性を使えば、克服可能です。最近では、プログラムCDMという新しいアプローチも可能となり、松尾はそのパイオニアでもあります。

したがって、カーボンオフセットというビジネスを軌道に乗せることができれば、それはとりもなおさず、そのようなプロジェクトが実現化するようにできる、ということとなります。これが、PEARを設立することとなったモーティべーションの大きなものでした。

一方で、日本国内で、とくに市民生活において有効にCO2を減らす手段がなかなかない、実現化していない、というのも大きな不満でした。松尾自身が、海外出張などに行くたびに、一種の罪悪感をおぼえてもきましたし(なにせ一年分の排出量以上を一回の出張で出してしてしまうわけです)、そのためにもっとも強力な削減手段が、まさにカーボンオフセットであるわけです。企画段階では、日本にはまだその動きが見えませんでした。

「カーボンオフセット」の概念に関しても、いろんな方向からブレーンストーミングを行いました。まず基本に立ち戻って、「責任感」に基づくものであるという点や、地球大気への負荷を減らしたいとするものである、など、いわば当然とも思われる概念を推敲し確認することで、いまのPEARのスタンスがあります(奇しくも差別化の要因となっていますが)。

PEAR設立にあたっては、つくるかぎりは、世界のどこのカーボンオフセットプロバイダーでもできないことを行いたいという気持ちもありました。上述のコベネフィッツ型CDMプロジェクトの自社開発もそうですが、もうひとつは、カーボンオフセットの機会が、それぞれの消費する場で提供されるようにしたいということです。人々がその気になれば、すぐに軽い気持ちで自分のカーボンフットプリントを相殺できる、という社会にしたいと思いました。またこれは、「CO2の見える化」があってはじめて実現化できるものであります。このためには、もちろんB-to-Cの企業の方々といっしょにしていくことが必須となります。これらの企業の方々の共感を得られるか、が今後の課題となりますね。

加えて、人々の行動変革にまで踏み込んだものとしたいという気持ちがありました。そうしてはじめて免罪符でない、と胸を張れるわけです。松尾はかねがね、気候変動枠組条約の非常に大きな成果として、GHGインベントリーの整備があると思っています。要は、どの国も「まず、どこからどの量のGHGを出しているか?それを知るところからはじめよう」ということです。

これが、「自分の排出量のマネージメント(管理)」というプラクティスであり、国レベル、先進的な企業レベルでは、行われてきています。これを個人も行うようになることこそ、第一歩としてベストであると思いました。小手先の対策だけでは、根付いていかず、行動という点で根本にメスを入れるべきと考えたわけです。

そのために、一カーボンオフセットプロバイダーのできること...として考えついたのが、「カーボンアカウント」です。活動ごとのカーボンマネージメントというCO2ダイエットのプラクティスの「場」の提供ですね。そこにおいては、カーボンオフセットは、ひとつの「きっかけ」であり、また、マネージメントのツールのひとつとなるわけです。ゆくゆくは、IT技術と組み合わせて、排出量の自動入力ができる社会にまでもっていきたいと思っています。これもB-to-C企業のご協力が必須ですが。。。 また、このカーボンアカウントの発展形として、簡単なしかしテーラーメイドな省エネ診断までできるようなものとしていきたいと思っています。

松尾は、大阪摂津市の南千里丘という市街区で、個々の家庭で詳細なリアルタイムエネルギー消費モニタリング+双方向型省エネ診断を行い、同時に家庭レベル排出権取引制度(オークションタイプ)を導入するというかなり革新的なスキームのデザインにかかわっています。これは、個々人の行動を変革する上で、適切な情報+インセンティブスキームの導入という点でかなり完備されたシステムであるわけです。対象がオープンなカーボンオフセットではそこまでは望めませんが、その経験を、このカーボンアカウントにも活かしていきたいと思っています。

このように、松尾は自分の持てる専門性を活かし、応用し、現実世界にボトムアップ的にそのビジョンを実現化させていくvehicleとして、PEARを設立いたしました。このビジョンに共感を覚えた専門家たち(湯本、佐々木、森、馬場、田辺、ゴジャシ)がその下に集ってきてくれていますし、側面からサポートしていただいているかたも大勢おられます。

その一貫として、開発途上国でのバイオガス・マイクロダイジェスタープロジェクトは、中国の重慶を皮切りに、動き出しました。第2弾、3弾も動かしていこうとしています。カーボンオフセット以外のチャンネルでもみなさんがこのようなプロジェクトにかかわれるようなスキームも検討中です。

国内では、個々人のカーボンマネージメントは、Web上でのデモ版から、さらに充実したものへ拡張しました。まだ手入力していただくしかないのですが、それを厭わなければ、十分に実用になるものになっていると思います。PEARの専門性を活かし、できるだけ正確に排出量を算定するツールもご用意しました。

今後の大きな課題は、B-to-Cの企業の方々に、担当者レベルでの共感から、企業レベルでの行動にうつるように、はたらきかけていくことです。

ユビキタスな排出量(カーボンフットプリント)の可視化とカーボンオフセットの機会が提供され、そして人々がそれぞれのカーボンのマネージメントを行う社会に向かって、その企業の本業を通じたCSRとして、またビジネス上の戦略として、検討していただきたく思っています。

PEARは、ソーシャルベンチャーとして、すくなくとも温暖化に関する専門性とビジョンとしての方向性だけは、世界のどこのカーボンオフセットプロバイダーにも負けない自信があります。あとは、うまくビジネスという面で、軌道に乗せていけるか?という点です。

みなさんに、このPEARの考えをご理解いただき、共感していただきたく願っています。

2008年5月28日
重慶に向かう朝6時
松尾 直樹