地球温暖化関連情報

国際的枠組み: 京都議定書の意味するところ

人類はきわめて対応が難しい地球温暖化問題に対し、どのように取り組んできているのでしょうか? そのひとつは、「科学的知見の蓄積」であり、これは前述のIPCCが担ってきています。もうひとつは、「対策を実施していく国際的枠組みの整備」であり、国際的には「気候変動枠組条約」および「京都議定書」がそれに相当します。

気候変動枠組条約

一般に、国際的な環境問題は、その問題が科学的に問題であると確認されてから、それが国際的に問題となり、現象に関して国際的にコンセンサスが形成されてはじめて、国際協定をつくって対応しようとします。

地球温暖化問題(気候変動問題)の前には、欧州における長距離越境大気汚染問題(いわゆる酸性雨問題)、そして成層圏オゾン層破壊問題がおこりました。これらの先駆的な事例があったおかげで、地球温暖化問題も比較的スムーズに交渉プロセスが進展したという経緯がありました。

図: 地球規模環境問題の国際協定における対応の発展

この国連の下の国際協定である気候変動枠組条約は、現在でも地球温暖化問題対応のための国際的取り組みのベースとなっている条約で、京都議定書の親条約でもあります。1992年採択、1994年に発効し、すでに米国を含む188カ国(+EC)の批准を得ています。
毎年開催される締約国会議(COP)において、種々の決定をおこなってきており、特に第3回会議(COP 3)においては、京都議定書が採択されました。それ以降の交渉のベースとなる「共通だが差異のある責任」、「予防原則」、「持続可能な発展との両立」、「究極の目的」、「経済効率性」などの基本的概念に関する共通理解を確立することに成功しています。

この条約の特徴は、気候問題の重要性を世界全体でまず再認識しあうという「枠組」条約としての性格を持ちつつ、途上国を含めたすべての国に差異化されたコミットメントを設定し、かつ各国からの報告制度およびその審査プロセス(先進国対象)を導入したことでしょう。すなわち、自主的な行動を重視する一方、そのパフォーマンスなどを通報や審査プロセスを導入することで、できるだけ担保しようとしています。

京都議定書とその意義

京都議定書は、気候変動枠組条約の子供の条約として、1997年12月に採択されました。 この議定書の意義は、

  • はじめて(先進国のみであるが)GHG排出量に制約(数値目標)を課した。
  • 市場を用いて目標を達成できるメカニズムという枠組みを提供した。

の2点です。

数値目標設定において、まず先進国のみを対象としたという点は、温暖化問題への責任の大きさから考えれば当然のことです。言い換えると、将来には(京都議定書の名前の下ではないこともありますが)発展途上国も徐々に加わっていくことが想定されます。京都議定書は、百年以上のスケールで取り組んでいかなければならないこの問題への第一歩と言うこともできるでしょう。
現在の京都議定書は、目標期間2008–2012年の5 年間平均で、先進国に対し、総枠で1990年水準マイナス5%の枠を設定しており、国別では日本のマイナス6%などの数値目標が課されています。

2 番目の点は、「GHG排出削減すれば儲かる」というインセンティブ・フレームワークを導入したことを意味しています。具体的には、京都メカニズム[排出権取引、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)]という三種類のメカニズムが導入されました。「排出権取引」は他の先進国から排出できる分を購入してきて自国目標を達成できるメカニズム、「共同実施(JI)」は他の先進国における省エネなどの排出削減(および吸収拡大)プロジェクトを実施することによる削減分を自国の削減分と認めるメカニズム、CDMは共同実施の途上国版です。

ここで、とくに注目したいのは、この「市場を活用する枠組み」の創設です。温暖化問題は、前述のように単なるひとつの環境問題というよりも、文明論的側面を持っています。言い換えると、社会を動かすシステムそのものに対策を「埋め込んで」いかなければ、その解決はおぼつかないのです。

現代社会を動かしているのは、言うまでもなく「市場メカニズム」です。すなわち、金銭的インセンティブを対策の枠組みに埋め込むことによって(のみ)、包括的、長期的な対策が可能となると言えるでしょう。排出削減が必要になれば、きちんと排出権価格が上昇し、さらなる削減行為が行われるというシステムです。これは、GHG削減という領域に、「分業」という経済の仕組みを持ち込んだことに相当します。分業自体は悪いものではありません。むしろこれがなければ社会は成り立たちません。

その最大の例として、2005年1月からは、EUにおいて排出権取引制度が動き出し(京都議定書に接続する前段階)、すでに日量で数百万トン規模の取引があります(トンあたり27ユーロ程度の価格(2007/06/06))。すなわち、エネルギー多消費企業は、排出権の市場価格動向をにらみながら、排出削減の機会をうかがっている状態にあるわけです。このEUの市場は、議定書の目標の動き出す2008年からは(米国をのぞく)世界市場へと発展していきます。

加えて、発展途上国もCDMというチャンネルを通じて、市場の魅力に気づきはじめています。言い換えると、GHG削減がコスト要因ではなく、「機会」であるという事実を明確に認識することで、いままでの南北間の対立構造から脱却して、グローバルな取り組みが進展していくことが期待されるわけですね。

PEARは、カーボンオフセットのもととなるプロジェクトを、このCDMや共同実施のプロジェクトとして、実施していきます。これらのメカニズムは、市場で取引されるものとして、排出削減効果に関して、非常に厳格な審査プロセスが導入されています。
 一方で、GHG削減効果「のみ」に価格がついているため、たとえば貧しい地域のプロジェクトが少なかったり、地域のGHG削減「以外」の便益のあるプロジェクトが少ないのも課題となっています。PEARはこの点に正面から切り込みます。

京都体制のルールの概要

京都体制のルールには、いくつも重要なものがありますが、ここでは企業活動に直接かかわるものとして、そのうちの排出権および排出削減クレジットの取引に関して、簡単に説明してみましょう。

下図に示されているように、京都体制においては、排出権が、大別して4種類存在し、それらはGHGユニットまたは京都ユニットと呼ばれています(単位はCO2換算トン)。

各先進国の初期割当(数値目標)のユニットをAAU、各国内吸収源活動による追加的吸収分のユニットをRMU、他の先進国への排出削減プロジェクト(共同実施)による削減分のユニットをERU、途上国での排出削減プロジェクト(CDM)による削減分のユニットをCERと呼びます。これらはどれも基本的には同じ価値を持ち、国際市場で取引されます。この取引を国際排出権取引と呼びます。


先進国各国は、自国の目標遵守の評価を、「5年間の実際の排出量」と、「期末に所有しているユニットの総量」をチェックすることでおこないます。後者のチェックのため、各国にはユニットのレジストリー制度が設立され、その国およびいくつかの国内企業は、その中に「口座(アカウント)」を持つことになります。各ユニットは、各国の企業などの口座間を電子情報として移転されます。これが排出権取引です。

実施ステージへ

京都議定書は、2001年末にマラケシュアコードという名前のルールブックを制定し、これは2005年12月のモントリオール会議で正式に決定事項となりました。言い換えると、この運用則の決定および発効を境に、京都体制は「制度デザイン」ステージから、「対策実施」ステージに移ったと言えます。バトンは、各国の国内行動計画の実施に移されました。また、これは企業にとっては、先行的に対策を実施するうえでの障害であった「大きな不確実性」が解消したことを意味しているわけですね。

京都議定書は、国に対する規制フレームワークですが、国はそれを達成するため、たとえば自国の企業に排出規制を課し、それを達成するためにCDMのクレジットであるCERをつかう(=排出超過分を企業が調達したCERをつかってオフセットする)ことを認めることができます。

言い換えると、企業は直接、他国の企業などから排出権(GHGユニット)を獲得し、自己のアカウントに保有したり、国内規制における自己の目標達成のために使うことができるわけです。これは国内規制の形態に依存しますが、それをもっとも明確な形で行ってきているのがEUです(EU域内排出権取引制度の導入)。

PEARでは、この企業が排出権を保有するシステムと類似したPEARカーボンアカウントというシステムをみなさまにご用意します。その中に、オフセットした量を記録していただきます(通常の排出権取引とは異なり、販売はできません。排出権は、地球のために使わないようにするわけです)。PEARのシステムは、さらに一歩進んで、どれだけの「排出量」があったか?という点に関しても記録・可視化することで、みなさまがカーボンマネージメントを行うことが可能となるサービスをご提供いたします。

ハイリゲンダムG8サミットの意味

2007年におこなわれたハイリゲンダムG8サミットは、かなり明確に「グローバルに2050年に温室効果ガス排出量を半減させる」という指標を提示しました。近い将来、少なくとも先進国においてはコンセンサスとなるでしょう。すなわちそのような方向に向かわなければならない、と考えるべきでしょう。これは、非常にチャレンジングなことです。

そのためには、企業もそうですが、みなさま個々人が、かなり明確な意思を持って取り組む必要があります。2008年からのCO2排出制約社会は、まだドアを開けただけで、これから本当の意味での真摯な取り組みをおこなわなければならないわけです。 PEARは、その高度な専門性を活かし、国際的にも国内的もかなり有効なそのためのプラットフォームを提供します。